延長された特許権の効力範囲

知財高裁平成29年1月20日は、延長された特許権の効力の及ぶ範囲に関し、 「物」についての特許発明の文言どおりの実施と、これと実質同一の範囲での当該特許発明の実施のいずれをも含むものと解すべき、 政令処分で定められた構成中に対象製品と異なる…

延長された特許権の効力と実質同一物

東京地判平成28年3月30日は、延長された特許権の侵害が争われた最初の事案といわれています。 延長された特許権の効力について、特許法68条2のは、以下のとおりです。「特許権の存続期間が延長された場合(第六十七条の二第五項の規定により延長され…

応用美術(工業デザイン)の著作物性

TRIP TRAP事件の控訴審判決以降、応用美術がどのような場合に著作物に該当するのかという点に関し、様々な見解が現れています。この問題の実質的な論点は、3次元の工業的デザイン(例えば、スポーツカー、バイク、飛行機など)を専ら意匠法で保護するのか、…

プロダクト・バイ・プロセス(PBP)クレームの明確性要件と相対的な明確性、唯一の証拠方法

最判平成27年6月5日は、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス(PBP)クレームについて、技術的範囲及び要旨認定ともに、物同一説を採用しました。 もっとも、PBPクレームの場合、原則として、クレームが明確性要件に適合しないと判断しました。その理由は…

保証人の主債務者に対する求償権に消滅時効の中断事由がある場合、共同保証人間の求償権に中断の効力は及ぶのか

主たる債務が、時効によって消滅する場合、保証債務も消滅します(民448条;保証債務の附従性)。それでは、共同保証人の一人が主債務者に対して求償権を有する場合、その求償権と、共同保証人間の求償権(民465条)との間には、附従性が生じるのでしょうか…

食品の用途発明

産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会審査基準専門委員会WGでの議論の結果、食品の用途発明の審査・審判にあたり、用途を限定したクレーム解釈が採用される見込みです。 一般論として、用途発明は、(発明者が)ある物の未知の属性を発見し、この属…

プロダクトバイプロセス(PBP)クレームの最高裁判決の調査官解説

L&Tに、プロダクトバイプロセス(PBP)クレームの最高裁判決について、担当調査官の解説が掲載されています。 気づいた点は、以下のとおりです。・製造方法による物の特定に関し、クレームの公示機能及び第三者への信頼が損なわれることへの懸念が重視…

新たな職務発明制度でのガイドライン素案(改正特許法35条4項の指針)

平成27年の特許法改正により、特許を受ける権利が使用者に原始的に帰属する制度の創設(35条3項)、相当な対価の請求権ではなく「相当の金銭その他の経済上の利益」(いわゆる相当な利益)の請求権への変更(35条4項)、相当な利益の決定(35条5…

引用発明の認定の誤り、双方向は単方向を含むのか

審決取消訴訟で審決が取り消される理由の一つに、引用発明の認定の誤りがあります。進歩性の議論としては、相違点の判断の誤りが華々しいのですが、相違点の判断の誤りは、本件発明及び引用発明の認定、そして両者の相違点の認定が何れも正しいことを前提に…

実施可能要件とサポート要件の違い、使用方法による物の特定とPBPクレーム

実施可能要件とサポート要件との関係については、既に検討したことがあります。 http://d.hatena.ne.jp/oneflewover/20100930/1285858294 http://d.hatena.ne.jp/oneflewover/20120510/1336655392 知財高判平成27年8月5日(平成26年(行ケ)第1023…

間接事実によるプログラムの著作権の複製又は翻案の立証

証拠が相手方当事者に偏在しているために、権利者にとって被疑侵害態様の立証が困難な場合があります。典型的な例は、製造方法の発明です。この問題については、最近の知財紛争処理タスクフォース報告書でも、証拠の収集手段について言及があります。 https:…

間接占有者に対する債務名義の間接強制

かつては、間接強制は、他の手段がない場合にのみ許されるとの立場から(間接強制の補充性)、作為又は不作為債務で代替執行によりえないものに限り、間接強制が認められていました(民事執行法172条)。 しかし、平成15年の民事執行法の改正(平成15…

商標的使用の主張立証責任の分配(商標法26条1項6号)

商標法では、商標の使用行為は、2条3項に規定されています。この規定では、例えば、商品又は商品の包装に標章を付する行為は、どのような態様であろうと、使用に当たります。そして、商標権の効力は、この使用の概念で画されています(25条及び37条) …

知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針の一部改正案

公正取引委員会が、アップルvサムスン事件の知財高裁大合議判決もふまえ、「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」の一部改正案を公表しました。http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h27/jul/150708.html 今回の改正案によると、 FRAND宣言を…

 審査基準の改訂案

特許庁が、審査基準の改訂案を公表し、パブコメの募集を始めています。 https://www.jpo.go.jp/iken/kaitei_150708.htm 今回の改訂の経緯については、産業構造審議会のWGの配布資料及び議事録が参考になります。http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shin…

プロダクト・バイ・プロセスクレームの審査・審判の取扱い

最高裁判決(最判平成27年6月5日(平成24年(受)第1204号及び同第2658号)) http://d.hatena.ne.jp/oneflewover/20150609/1433858808 を受けて、特許庁は、プロダクト・バイ・プロセスクレームの審査を中断し、その取扱いを検討していました…

プロダクトバイプロセスクレームの最高裁判決を受けた審査基準の改訂、明確性要件以外の要件への波及の可能性

特許庁は、プロダクトバイプロセスの最高裁判決(最判平成27年6月5日(平成24年(受)第1204号、平成24年(受)第2658号))を受けて、・「特許・実用新案審査基準 第I部 第1章 明細書及び特許請求の範囲の記載要件」の改訂について検討を開始する ・7…

最高裁判決を受けたプロダクトバイプロセス(PBP)クレームの行方

平成27年6月5日付けの2件の最高裁判決(平成24年(受)第1204号及び同第2658号)は、前者が技術的範囲の確定、後者が特許性の判断のための要旨認定に関するものです。 なお、両者とも、原審は侵害訴訟の控訴審です。前者(平成24年(受)第…

プロダクトバイプロセス(PBP)クレームの最高裁判決

報道によると、侵害論のクレーム解釈(技術的範囲の確定)について、物同一説を原則とすると判断されたようです。 PBPクレームの解釈の主要な説には、物同一説と製法限定説とがあります。クレームの範囲については、 物同一説での範囲>製法限定説です。 …

大学教員の論文のウェブ公開

京都大学が、教員に対し、論文をウェブで公開することを「原則」義務化する、との報道がありました。 しかし、現実には(少なくとも理工系については)、全面的な実現は難しいように思います。報道でも、「投稿先の出版社や学会が著作権などの理由で公開を認…

知財高裁設立10年に関する記事

日経の月曜の朝刊に、知財高裁設立10周年に当たっての記事が出ています。 その中で、元特許庁長官が、アップル・サムスンの大合議判決の損害賠償額が低すぎる、米国の連邦地裁では、同じ当事者間の訴訟で桁違いの賠償額が認められているとコメントしていま…

プロダクトバイプロセス(PBP)クレームの上告審

プロダクト・バイ・プロセス(PBP)の技術的範囲の画定と、傍論として要旨認定に関する知財高裁の大合議判決について、最高裁で弁論が行われ、6/5に判決が言渡される予定です。 技術的範囲については、物同一説が原則になっても、製法限定説が原則になっ…

均等の第4要件と公知技術の抗弁、そして無効の抗弁との関係

東京地判平成24年3月25日(平成26年(ワ)第11110号)では、均等侵害の主張に関し、裁判所が「事案に鑑み、均等の第4要件から判断する」との方針のもと、均等の第4要件が充足されていないと判断し、請求を棄却しました。第4要件から判断する…

応用美術は著作権で保護されるか

応用美術(例えば、工業製品のデザイン)の著作物性については、これまでにも、 ・意匠権で保護すべきなのか、著作権法でも保護を許容すべきなのか、 ・両者の重複が許されるとして、著作権法で保護される領域(つまり、著作物性が認められる範囲)はどこま…

特許庁の産業財産権制度問題調査研究報告書(延長登録、知財研への委託)

平成26年度の特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書が、特許庁のウェブサイトに公開されています。その中には、存続期間の延長登録に関するものも含まれています。 この報告書は、各国の制度の比較及びユーザのアンケート結果などが含まれているため、今…

事前請求権を被保全債権とする仮差押えによって、事後請求権の消滅時効も中断するのか

最判平成27年2月17日(平成24年(受)第1831号)は、「事前請求権を被保全債権とする仮差押えによって、事後請求権の消滅時効も中断するのか」という問題について、肯定の結論を下しています。 この事案には、・事前請求権と事後請求権との関係 …

「発明特定事項に該当する事項」説 (延長された特許権の効力)

延長登録に関する知財高裁大合議判決について、様々な評釈が出つつあります。 L&T67号では、熊谷先生が、批判的な立場から見解を述べておられます。熊谷先生は、特許庁の「発明特定事項に該当する事項」説*を支持されているようです。(* 先行処分によって(…

外国法人の関与する侵害行為に対する訴えの提起

[外国法人] 外国法人Y1が被疑侵害品を製造して日本の販売店Y2に輸出し、Y2が国内の顧客に対し当該被疑侵害品を販売しているという場合、特許権者Xは、当然、販売店Y2に対して訴えを提起することができます。しかし、販売店Y2が十分な資産を有し…

審査基準の改定案(進歩性)

産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会のWGで、審査基準の改定について議論がされています。本年1月の議題の一つは、進歩性でした。主要な変更候補は、以下のとおりです。(1) 技術分野の関連性の重要度を落とす。 技術分野の関連性に基づいて拒絶…

契約当事者の事業規模と契約の解釈 − 後見的な介入か、文言の重視か

小規模な会社や個人間の契約では、しばしば、契約書が簡素なことがあります。その場合、解釈の余地が広く残されています。さらに、裁判所が、当事者の合理的な意思解釈にあたり、文言の直接的な意味を離れることもあります。 その一方、大規模な会社同士の契…