TPPに伴う特定の著作物についてのみの著作権の保護期間の延長

 報道では、米国は、著作権の保護期間を一律に70年に延長するのではなく、著作物の類型ごとに保護期間を変えるという提案をしているようです。

 日本でも、映画の著作物の著作権のみ、別の扱いを受けており、保護期間は、公表から70年です(著作権法54条1項)。しかし、他の著作物については、著作者の死後50年が原則です(57条)。
 映画の著作物のみ特別な扱いにした理由として、改正当時、起算点の違いが挙げられていました。
 映画の著作物の場合、保護期間の終期の起算点が、公表時です。その一方、他の著作物での終期の計算方法(著作者の死亡から50年という計算方法)では、著作者が生存している限り、50年のカウントダウンは始まりません。そこで、映画の場合、実質的に保護期間が侵食されているというわけです。
もっとも、映画の著作物には経済財としての側面が強いという事情も見逃せません。

日本の制度のように、著作物毎に保護期間を異ならせることは、一つの手法です。もっとも、各国で統一が採れた制度が生まれるかというと、問題もあります。つまり、同じ用語(例えば「映画」)を用いても、その解釈は各国で異なる可能性があります。特に、新しいコンテンツが生まれる場合、従来のカテゴリーの何れに分類するのかは、解釈が分かれる可能性があります(日本でも、コンピュータ・ゲームが現れた際、映画の著作物に該当するか否かが争われたことがあります(パックマン事件))。結果として、各国で異なる保護期間が適用される可能性もあります。