販売と特許権侵害との関係は?

 日本に在住の日本人同士が、アメリカに置いている製品について、日本法を準拠法として売買契約を締結したとします。この売買は、特許法上の「譲渡」に該当するのでしょうか。確かに、日本人同士の取引ですが、日本のマーケットは全く害されていません。
まして、この製品がアメリカで費消されたり、アメリカで据えつけられたりする場合まで、特許権侵害が生じるのでしょうか。
この製品が日本に入ってくることは問題ですが、この事態は、「輸入」に該当し、特許権侵害が生じます。

このように、特許法上の「譲渡」は、国境を跨いだ取引の場合、一筋縄ではいかないものです。

最近、アメリカの連邦巡回控訴裁判所で、上記と似た事例について判決が出ています(No.2009-1556)。この事案の概要は、以下のとおりです。
 アメリカ法人同士が、ノルウェーにある機械について、売買契約を締結しました。この機械の仕向地は、アメリカ国内でした。ところが、アメリカに輸入する前に、この機械が第三者の特許の権利範囲に属することがわかりました。そこで、当事者は、輸入前にこの機械を改造し、権利範囲外としました。
問題は、契約締結時点で、売買が特許法上の”sale”に当たり、特許権を侵害するのかという点です。

連邦巡回控訴裁判所は、仕向地及び使用地がアメリカ国内である限り、売買契約によって侵害が生じると判断しています。

個人的には、アメリカ国内に搬入する時点では非侵害となっており、アメリカのマーケットは害されていないのですから、侵害を認めなくてもよいのではないかと思います。