形態模倣の起算点

不正競争防止法2条1項3号は、他人の商品の形態を模倣した商品の販売などを不正競争と定義しています。まるめてしまうと、その趣旨は、オリジナル商品のデットコピー品の販売を禁止するという点にあります。もっとも、禁止期間は、日本国内において最初に販売された比から起算して3年間です(19条1項5号イ)。
 
 問題は、3年間という期間の起算点です。

 企業活動が日本国内で閉じているなら、起算点が大きな問題点になるわけではありません。しかし、外国の会社が、ネット上でオリジナル商品の販売を開始すると、日本の消費者も、そのサイトにアクセスし、オリジナル商品を購入できます。その後、日本での販売店が決まり、日本の消費者に特化した販売を開始することもあります。この場合、起算点は、外国の会社がネット販売を開始した時期か、日本販売店が販売を開始した時期か、どちらになるのでしょうか。その時期によっては、販売開始から3年が経過し、デッドコピー品の販売が(不競法2条1項3号との関係では)可能となることもあります。

 この問題が当事者間で争われた事例として、東京地判平成22年9月17日(平成20年(ワ)第25956号)があります。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100922100123.pdf
 当事者が争点にはしたものの、裁判所は、この争点について判断を示すことなく、別の条項で結論を出しています。

 似たような問題は、商標の使用についても生じます。外国のサーバで商標を付して広告がなされている場合、どの地で商標が使用されたのか、簡単には結論が出ません。この問題については、WIPOによる勧告があり、大変参考になります。しかし、WIPOの勧告によって日本法が解釈されるわけでもありません。ウェブサイトの表記(例えば言語、使用できる通貨)、日本での営業拠点の有無など様々な要素を考慮して、日本での使用といえるのか、判断する必要があります。