2014-01-01から1年間の記事一覧

「からなる」が他の要件を排除するか、クレーム解釈とサポート要件とはコインの表と裏か、実施化の要件とサポート要件との関係

東京地判平成26年10月9日(平成24年(ワ)第15612号)は、興味深い論点を含んでいます。1 「からなる」は日本でどのように解釈されるのか アメリカでは、comprising …(を含む)は、他の要素が共存してもよく、consisting of…(からなる)は、…

本件発明と主引用発明との課題の相違

主引用発明の指向する方向が、本件発明のものと乖離している場合、両者の構成が類似していても、進歩性は肯定されやすい傾向にあります。知財高判平成26年7月17日(平成25年(行ケ)第10242号)も、その例です。 本件発明は、ラインセンサカメラ…

職務発明と成果主義

現在、産構審の知財分科会特許制度小委員会において、職務発明制度の法改正が議論されています。その関連で、従業員が自らの成果について対価を得ることを意識する結果、R&Dの組織としてのチームワークが損なわれているのではないかという指摘もあります。…

知財高裁(審決取消訴訟)と地裁(侵害訴訟での無効の抗弁)とで判断が分かれた理由

知財高判平成26年7月9日(平成25年(行ケ)第10239号)と東京地判平成26年7月10日(平成24年(行ワ)第30098号)とでは、同じ特許(特許第4274630号)について、同じ無効理由(主引例:特開平11−7956(甲1;地裁の乙1…

特許法102条1項と同3項との重畳適用の可否

特許法102条1項は、以下のとおりです。「特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したとき…

本件発明の認定、容易想到性の総合考慮に効果は考慮しなくてよいのか

知財高判平成26年5月29日(平成25年(行ケ)第10200号)では、訂正後の発明の「そのまま」の意味が問題になりました。「菜種を圧搾機により搾油し,続いて圧搾粕に残された油分を有機溶剤を用 いて抽出して得られる菜種粕であって, 2 メッシュ…

引用発明の認定(1まとまりの技術的思想としての引用発明か、本件発明と対比するための引用発明か)

[引用発明の認定] 引用発明は、本件発明との対比のため(主引用発明の場合)又は相違点の構成に当たる発明として(副引用発明の場合)、用いられます。本件発明との対比という観点では(又は相違点の構成の抽出という観点では)、本件発明のフィルターを通…

明示的一部請求で債権の総額が認定された場合の残部の消滅時効

最判平成25年6月6日民集67巻5号1208頁の担当調査官による時の判例が、ジュリスト6月号に掲載されています。調査官は、「明示的一部請求の訴えの提起が残物につき時効中断効を生ずるか否かという『古典的な論点』について」「最高裁が裁判上の催…

のみ品の譲渡(専用品型の間接侵害)と最終製品の消尽及び黙示の許諾

FRAND宣言の控訴審判決(知財高判平成26年5月16日(平成25年(ネ)第10043号))では、傍論ではありますが(p.114の「念のため」以降)、特許権者又は実施権者が特許法101条1号に該当する製品(いわゆる「のみ」品又は専用品)(「1号製品…

FRAND宣言と損害賠償請求権及び差止請求権

要旨を読む限り、・当該事案でのFRAND宣言そのものは、契約の申込みには当たらないため、第三者の承諾もあり得ず、ライセンス契約は成立しない(注:準拠法とFRAND宣言の文言によっては、違う結論もあり得ると解されます。)・FRAND条件でのライセンス料相当…

差止の外国判決の間接管轄

米国での差止判決が日本で執行できるか否かに関し、最高裁判決が出ました(最判平成26年4月24日(平成23年(受)第1781号)。 今回の最判は、差止請求について直接管轄がどのように判断されるのか、その解釈が間接管轄にどのように反映されるのか…

アメリカでの2種類のクレーム解釈(特許付与の段階でのクレーム解釈と侵害裁判所でのクレーム解釈)

アメリカでは、伝統的に、特許庁でのクレーム解釈と裁判所でのクレーム解釈とは異なっています。特許庁では、”Reasonably Broadest Interpretation ”(RBI)の基準が採用され、裁判所では、侵害論でも無効論でも、明細書を考慮したクレーム解釈が採用されて…

外国で開始された倒産手続の管財人の権限とライセンス契約の解除

キマンダの事件についてhttp://d.hatena.ne.jp/oneflewover/20100929/1285857897昨年末、第4巡回区控訴裁判所の判決が出ました。 結論としては、外国管財人が、当該外国の倒産法では、双務未履行契約を解除する権限を有していても、各当事者の利害のバラン…

引用発明の認定と技術常識

引用文献に、 αの機能を有する化合物とβの機能を有する化合物とを含有する組成物 との上位概念が記載されており、αの具体例としてA1ないしAnが列挙され、βの具体例としてB1ないしBnが列挙されていたとします。 そしてAiは、αのほかに、γの機能も有していたと…

技術分野の「非」関連性

進歩性は、総合判断型の規範的要件です。考慮要素は様々なものがありますが、類型化されたものとしては、技術分野の関連性、課題の共通性、機能及び作用の共通性などが挙げられます。 約7−8年前までは、特許を無効にし又は出願を拒絶する際、技術分野の関…

明確性要件違反による無効理由

明確性要件違反によって特許が無効とされる例は、少数に限られています(例として、知財高判平成21年3月18日;「平均粒子径」の定義が明確になされていなかった事例)。もっとも、特許権者が、クレームの記載が明確性要件に適合するよう釈明すると、被…

再生医療等製品の特許権の存続期間延長(2)

改正薬事法で新設された再生医療等製品には、2種類の承認(条件及び期限付承認と通常の承認)があります。 いずれを特許法上の政令指定処分にするか、議論のあったところですが、 http://d.hatena.ne.jp/oneflewover/20140225/1393340651産業構造審議会のW…

特許査定の取消訴訟

「特許査定を取り消す」という珍しい主文の判決が、東京地裁で出ています(東京地判平成26年3月7日(平成24年(行ウ)第591号))。この件は、通常の行政訴訟(抗告訴訟としての取消訴訟)ですので、知財高裁ではなく、東京地裁に第1審の管轄があ…

論文のExperimentalの著作物性

科学系の論文(特に、full paper)は、通常、Abstract, Introduction, Experimental, Results, Discussion, Conclusionの順で章が並んでいます。 このうち、Experimentalについては、誰が書いても同じ内容になりやすいという性質があります。新たな実験手法…

再生医療等製品の延長登録

産業構造審議会特許制度小委員会の「特許権の存続期間の延長制度検討WG」では、「再生医療等製品」による延長に関し、今月から、議論が始まっています。 この議論は、昨年の薬事法改正により、「再生医療等製品」というカテゴリーが新設され(2条9項;改…

FRAND宣言をした特許権者は、最終的に誠実に交渉すれば、過去に遡ってライセンス料を得られるのか

FRAND宣言に伴う権利者と第三者(潜在的なライセンシー)との間の関係については、・法的な権利義務関係が既に成立している (例えば、差止請求権に関する権利放棄、(標準化団体の規約にも依存しますが)第三者のためにする契約(注:この法律構成の場合、…

新薬開発、日本に回帰?

今朝の朝刊の一面に、「新薬開発、日本に回帰」と題する記事が出ています。もっとも、その記事の内容は、タイトルとはやや異なる印象を受けます。 かつては、海外のメガファーマは、日本に研究所を設置し、研究者を雇用して、自らR&Dに取り組んでいました。…

FRAND宣言の下での差止請求及び損害賠償請求に関する意見募集手続き

一連のスマホ訴訟(アップルvサムスン)のうち、サムスンがFRAND宣言をした権利を行使した件 http://d.hatena.ne.jp/oneflewover/20130421/1366550722 の控訴審において、裁判所の主導により、一般から意見を募集することが決まりました。FRAND宣言のされた…

 侵害主体と私的使用のための複製

個人が全ての作業を自らの労力と費用で行うと、その行為が私的使用のための複製(著作権法30条)に該当し、著作権が及ばない場合でも、その一部を営利目的の業者に委託すると、受託した業者の行為が問題になります(最近の自炊代行業者の事件(東京地判平…

定期刊行物の題号と不正競争防止法上の商品表示

[商標法上の書籍の題号と定期刊行物の題号との違い] 一般に、書籍の題号は、その書籍の内容、つまり品質を表示しています。そのため、商標登録出願をしても、商標法3条1項3号(その商品の・・・品質・・・を普通に用いられる方法で表示する標章のみから…