法律一般

応用美術(工業デザイン)の著作物性

TRIP TRAP事件の控訴審判決以降、応用美術がどのような場合に著作物に該当するのかという点に関し、様々な見解が現れています。この問題の実質的な論点は、3次元の工業的デザイン(例えば、スポーツカー、バイク、飛行機など)を専ら意匠法で保護するのか、…

保証人の主債務者に対する求償権に消滅時効の中断事由がある場合、共同保証人間の求償権に中断の効力は及ぶのか

主たる債務が、時効によって消滅する場合、保証債務も消滅します(民448条;保証債務の附従性)。それでは、共同保証人の一人が主債務者に対して求償権を有する場合、その求償権と、共同保証人間の求償権(民465条)との間には、附従性が生じるのでしょうか…

間接占有者に対する債務名義の間接強制

かつては、間接強制は、他の手段がない場合にのみ許されるとの立場から(間接強制の補充性)、作為又は不作為債務で代替執行によりえないものに限り、間接強制が認められていました(民事執行法172条)。 しかし、平成15年の民事執行法の改正(平成15…

知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針の一部改正案

公正取引委員会が、アップルvサムスン事件の知財高裁大合議判決もふまえ、「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」の一部改正案を公表しました。http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h27/jul/150708.html 今回の改正案によると、 FRAND宣言を…

事前請求権を被保全債権とする仮差押えによって、事後請求権の消滅時効も中断するのか

最判平成27年2月17日(平成24年(受)第1831号)は、「事前請求権を被保全債権とする仮差押えによって、事後請求権の消滅時効も中断するのか」という問題について、肯定の結論を下しています。 この事案には、・事前請求権と事後請求権との関係 …

外国法人の関与する侵害行為に対する訴えの提起

[外国法人] 外国法人Y1が被疑侵害品を製造して日本の販売店Y2に輸出し、Y2が国内の顧客に対し当該被疑侵害品を販売しているという場合、特許権者Xは、当然、販売店Y2に対して訴えを提起することができます。しかし、販売店Y2が十分な資産を有し…

契約当事者の事業規模と契約の解釈 − 後見的な介入か、文言の重視か

小規模な会社や個人間の契約では、しばしば、契約書が簡素なことがあります。その場合、解釈の余地が広く残されています。さらに、裁判所が、当事者の合理的な意思解釈にあたり、文言の直接的な意味を離れることもあります。 その一方、大規模な会社同士の契…

職務発明と成果主義

現在、産構審の知財分科会特許制度小委員会において、職務発明制度の法改正が議論されています。その関連で、従業員が自らの成果について対価を得ることを意識する結果、R&Dの組織としてのチームワークが損なわれているのではないかという指摘もあります。…

明示的一部請求で債権の総額が認定された場合の残部の消滅時効

最判平成25年6月6日民集67巻5号1208頁の担当調査官による時の判例が、ジュリスト6月号に掲載されています。調査官は、「明示的一部請求の訴えの提起が残物につき時効中断効を生ずるか否かという『古典的な論点』について」「最高裁が裁判上の催…

FRAND宣言と損害賠償請求権及び差止請求権

要旨を読む限り、・当該事案でのFRAND宣言そのものは、契約の申込みには当たらないため、第三者の承諾もあり得ず、ライセンス契約は成立しない(注:準拠法とFRAND宣言の文言によっては、違う結論もあり得ると解されます。)・FRAND条件でのライセンス料相当…

差止の外国判決の間接管轄

米国での差止判決が日本で執行できるか否かに関し、最高裁判決が出ました(最判平成26年4月24日(平成23年(受)第1781号)。 今回の最判は、差止請求について直接管轄がどのように判断されるのか、その解釈が間接管轄にどのように反映されるのか…

外国で開始された倒産手続の管財人の権限とライセンス契約の解除

キマンダの事件についてhttp://d.hatena.ne.jp/oneflewover/20100929/1285857897昨年末、第4巡回区控訴裁判所の判決が出ました。 結論としては、外国管財人が、当該外国の倒産法では、双務未履行契約を解除する権限を有していても、各当事者の利害のバラン…

特例法による性別の取扱いの変更の審判を受けた場合の父性及び嫡出性の推定規定の適用の可否 − 最決平成25年12月10日 −

[事案] 抗告人X1は、性同一障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(「特例法」)3条1項の規定により、女性から男性への取扱いの変更の審判を受けました。 抗告人X2(女性です。)は、X1と婚姻し、夫であるX1の同意の下、X1以外の男性の精子…

新司法試験の選択科目

法曹養成制度改革顧問会議で、新司法試験の選択科目を廃止するか否かが議題に上っています。 それに対し、各科目に関連する団体及び実務家からは、当該科目の重要性を理由の一つとして、反対の意見が出ています。もっとも、今回の議論の争点は、選択科目のリ…

「裁判所は、サイエンス的発想が弱い」

田原睦夫・元最高裁判事の講演録が、金融法務事情1978号に掲載されています。非常に興味深い内容が多々盛り込まれているのですが、その中には、「そういうのを見ていると(注:最判平24.2.8刑集66巻4号200頁及び最判平23.10.31判時21…

明示的一部請求と残部についての裁判上の催告としての消滅時効の中断

最高裁が、いわゆる明示的一部請求の場合に、残部についても消滅時効が中断するのかという論点について、判決を出しています(最判平成25年6月6日判時2190号22頁(民集登載予定))(従前の議論について、 http://d.hatena.ne.jp/oneflewover/2013…

違憲判決の遡及効

嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の1/2とする規定(民法900条4号ただし書き)について、最高裁大法廷が、当該規定が憲法14条1項に反するという違憲決定を出しました。 この規定については、平成7年大法廷決定で合憲とされた後(平成7年大法…

解雇権濫用の法理、整理解雇の4要素及び解雇の金銭解決制度の導入

労働法制の改正に関し、最近では、解雇の基準を明確にすべき、解雇をしやすくすべきという観点からの議論も盛んです。その背景として、 ・正規雇用の解雇が困難であると、労働力の調整が非正規雇用に集中してしまう(雇用の二極化)、 ・法的に根拠のある解…

一部請求と残部の消滅時効

[一部請求の利用態様] 金銭の支払い請求では、一部の額のみを申し立てることがあります(一部請求)。 一部請求が用いられる典型的な場面は、不法行為の損害賠償請求です。例えば、交通事故の被害者の場合、損害額が最終的にどのような額になるのか、訴え…

FRAND条項による権利濫用

報道によると、アップルとサムスンのスマホ訴訟(サムスンが原告のもの)において、地裁は、サムスンがFRAND条項にもかかわらずアップルと誠実に交渉しなかったことを理由として、請求を棄却したそうです。 FRANDとは、Fair, Reasonable And Non-Discriminat…

外国判決の執行判決を求める訴えと債務不存在確認訴訟における訴えの利益との関係、民事訴訟法3条の5第2項は特許権の登録に適用されるか

東京地判平成25年2月19日(平成22年(ワ)第28813号は、外国判決の執行判決を求める訴えが係属していることを理由に、当該外国判決の判断対象である権利義務に関する債務不存在確認の訴えは、確認の利益を欠くと判断し、訴えを却下しました。 事…

仮処分の申立て及び執行が不法行為となる場合と訴えの提起が不法行為となる場合

仙台高判平成23年5月12日判時2164号69頁は、 ・債権者の申立てを認容した仮処分命令が保全抗告審で取り消され、本案訴訟でも敗訴した場合に、仮処分命令の申立て及び執行が不法行為とされ ・上記不法行為に基づく損害賠償を求めた債務者の訴えの…

不法行為の国際裁判管轄

先週の新聞記事で、製鉄会社間の不正競争に関する訴訟において、国際裁判管轄が争点の一つとなっていると報じられています。 不正競争防止法4条の損害賠償請求は、民法709条の特則であると解されるため、日本の裁判所での管轄の有無は、民事訴訟法3条の…

濫用的会社分割に対する詐害行為取消権の行使

いわゆる濫用的会社分割について、民法の詐害行為取消権の行使を認めた最高裁判決が出ています(最判平成24年10月12日)。 この争点については、最近、下級審判決を契機として、様々な学者及び実務者の論文及び評釈が出ています(例えば、伊藤先生、神…

継続的契約の終了

販売代理店契約やフランチャイズ契約など、取引が長期間にわたることが予想される契約(いわゆる継続的契約)では、(i)契約の終期がそもそも定められていなかったり、(ii)契約期間は定められているものの、自動更新条項(いずれの当事者も更新拒絶をしない限…

弁護士の就職難

昨日(2012年6月4日)の日本経済新聞の法務欄に、「弁護士の就職 開拓の余地」と題する記事が載っています。見出しには「企業や役所、法曹ニーズは拡大」、「人材のミスマッチ課題」などという言葉が並んでいます。 この記事は、すでに法科大学院入学という…

特許権の譲渡と通謀虚偽表示

会社の資金繰りが苦しくなると、債権者は債権回収を急ぎ、資産を差押え始めます。重要な資産を失うと、事業の継続は難しくなります。もっとも、会社の事業の中には、収益の改善の見込みが立たないものばかりではなく、継続が見込まれるものもあります。そこ…

パブリシティ権の性質

ピンクレディ事件の最高裁判決が出ています(最判平成24年2月2日)。 パブリシティ権の性質については、人格権的構成と財産権的構成とがあり、どちらに依拠するかによって、権利の譲渡や相続について違いが生じます(これまでの下級審判決の詳細な解説と…

著作権侵害と一般不法行為

北朝鮮映画事件の最高裁判決(最判平成23年12月8日)が出ています。 控訴審(知財高判平成20年12月24日)は、北朝鮮の国民が著作者である映画(当然のことながら、映画の著作物に該当します。)について、著作権法6条による保護を受けられないと…

知的財産法で保護されない利益と不法行為法による救済

不競法2条1項3号は、他人の商品形態を模倣した商品の譲渡等を不正競争として規定しており、いわゆるデッドコピーを禁止した条項と理解されています。もっとも、不競法2条1項3号には、適用除外があります(同19条1項5号)。日本国において最初に販…