著作権

大学教員の論文のウェブ公開

京都大学が、教員に対し、論文をウェブで公開することを「原則」義務化する、との報道がありました。 しかし、現実には(少なくとも理工系については)、全面的な実現は難しいように思います。報道でも、「投稿先の出版社や学会が著作権などの理由で公開を認…

契約当事者の事業規模と契約の解釈 − 後見的な介入か、文言の重視か

小規模な会社や個人間の契約では、しばしば、契約書が簡素なことがあります。その場合、解釈の余地が広く残されています。さらに、裁判所が、当事者の合理的な意思解釈にあたり、文言の直接的な意味を離れることもあります。 その一方、大規模な会社同士の契…

論文のExperimentalの著作物性

科学系の論文(特に、full paper)は、通常、Abstract, Introduction, Experimental, Results, Discussion, Conclusionの順で章が並んでいます。 このうち、Experimentalについては、誰が書いても同じ内容になりやすいという性質があります。新たな実験手法…

 侵害主体と私的使用のための複製

個人が全ての作業を自らの労力と費用で行うと、その行為が私的使用のための複製(著作権法30条)に該当し、著作権が及ばない場合でも、その一部を営利目的の業者に委託すると、受託した業者の行為が問題になります(最近の自炊代行業者の事件(東京地判平…

庭園の著作物に対する建築の著作物の条項の適用 (同一性保持権の一般条項としての著作権法20条2項4号)

[建築の著作物の特殊性] 著作権法では、著作物の例示として、建築の著作物が挙がっています(10条1項5号)。 建築の著作物では、第三者にその利用が広く認められるとともに(46条2号;「建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡によ…

自炊代行業者に対する差止め

いわゆる自炊代行業者に対する差止め及び損害賠償請求訴訟の判決が出ています(東京地判平成25年9月30日(平成24年(ワ)第33535号)。まねき及びロクラクの最判から予想されたとおり、判決は、権利者の請求を認容しました。 「枢要な行為」に関…

TPPに伴う特定の著作物についてのみの著作権の保護期間の延長

報道では、米国は、著作権の保護期間を一律に70年に延長するのではなく、著作物の類型ごとに保護期間を変えるという提案をしているようです。 日本でも、映画の著作物の著作権のみ、別の扱いを受けており、保護期間は、公表から70年です(著作権法54条…

電子出版での出版社の権利

文化審議会の著作権分科会出版関連小委員会では、本年5月13日より、電子出版に関連する出版社の権利について集中的に議論を重ね、7月29日の第6回の会議により、電子出版権の創設の方向が固まったと報道されています。 電子出版における出版社の権利が議論と…

TPPと著作権保護期間の延長

8/1の新聞の朝刊に、「著作権保護延長 TPPで容認論」と題する記事が掲載されています。そのなかで、保護期間を国などにあわせて70年に延長することが検討されていること、文科省幹部の発言として「米農業のように譲れない問題ではない」との容認論が出…

著作権の保護期間とTPP

TPP交渉の開始にあたり、日本政府は、知財分野の交渉方針を米国と統合し、その一環として、著作権の保護期間を50年から70年に延長する方針を決めたとの報道がなされました。現在のところ、政府は、この報道を否定しています。 文化審議会では、著作権…

特許法102条2項及び著作権法114条2項における損害の発生の要件

知財高判平成25年2月1日の大合議判決は、従前の一般的な説(特許法102条2項では、権利者の実施が要件であるとの説)を覆し、「特許権者が当該特許発明を実施していることは、同項を適用するための要件とはいえない」と判示しました。 具体的な内容は…

翻案の成否と「本質的特徴の直接感得」

携帯電話向け釣りゲームの「魚の引き寄せ画面」の翻案権侵害を巡って争われた事件の控訴審判決が出ています。一審は翻案権侵害を肯定し、その結論が意外であったのですが、控訴審は、翻案権侵害を否定しました。 今日、翻案権の規範として、江差追分事件の最…

 応用美術の著作物性

[文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの] 著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)です。 「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」は、これらの4…

違法ダウンロードの刑事罰化と音楽配信のコピー制限撤廃

本日の日本経済新聞の朝刊に、違法ダウンロードを刑事罰化する著作権法改正が成立したため、レコード会社がインターネット配信の楽曲のコピー制限を廃止するとの記事が掲載されています。 著作権法の改正は、一つの契機にはなったのかもしれません。しかし、…

私的録音録画補償金制度とアナログチューナー非搭載DVD録画機

アナログチューナー非搭載DVDレコーダが私的録音録画補償金制度(著作権法30条2項及び施行令1条)の対象であるか否かを巡って、第1審(東京地判平成22年12月27日(平成21年(ワ)第40837号))、控訴審(知財高判平成23年12月22…

著作権の保護期間と過失

格安DVDの著作権侵害の事案で、知財高裁が過失を否定して損害賠償請求を棄却した件(知財高裁平成22年6月17日)につき、最高裁が破棄差戻しの判決を下しています(最判平成24年1月17日)。[著作権の保護期間] 格安DVDの事案での争点は、著…

著作権侵害と一般不法行為

北朝鮮映画事件の最高裁判決(最判平成23年12月8日)が出ています。 控訴審(知財高判平成20年12月24日)は、北朝鮮の国民が著作者である映画(当然のことながら、映画の著作物に該当します。)について、著作権法6条による保護を受けられないと…

プロバイダ責任制限法上の「特定電気通信」と1対1の通信、著作権法上の「公衆」

プロバイダ責任制限法の適用対象を画する上で、「特定電気通信」は重要な概念です。プロバイダの損害賠償責任が制限されるのも、発信者情報開示請求権が生じるのも、「特定電気通信」との関係です。 「特定電気通信」は、「不特定の者によって受信されること…

クラウドと著作権

まねきTV事件及びロクラクII事件の最高裁判決(最判平成23年1月18日民集65巻1号121頁及び最判平成23年1月20日民集65巻1号399頁)以降、クラウド(コンピューティング)のサービス事業者が著作権侵害を問われるのではないかという…

 「結婚したようなもの」

沢神奈川県知事の「破天荒力 箱根に命を吹き込んだ『奇妙人』たち」について、知財高裁で、著作権を侵害しないとの逆転判決が出ています。 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100716152954.pdf 問題になったのは、「彼は、富士屋ホテルと結婚したような…

フェアユース

7月22日付けで、「権利制限の一般規定に関する中間まとめ」に対する意見募集(まるめると、フェアユースのパブコメ)の結果が公表されています。 http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000465&Mode=2 職業的な権利者団体…