大学教員の論文のウェブ公開

 京都大学が、教員に対し、論文をウェブで公開することを「原則」義務化する、との報道がありました。
 しかし、現実には(少なくとも理工系については)、全面的な実現は難しいように思います。報道でも、「投稿先の出版社や学会が著作権などの理由で公開を認めないこともある」と紹介されていますが、むしろ、著作権を理由に自由に公開できないことの方が大半であろうと思います。
通常、研究者は、論文を投稿する際、著作権を出版元に譲渡することに同意しています。投稿のフォームにそのような条項があり、同意しなければ投稿を受け付けてもらえません。つまり、著作権は、研究者ではなく出版元に移転しています。研究者では、自らの意思で論文の公開を決めることはできません。
 もちろん、一定部数に限り、研究者が自らコピーして配ることは、多くの雑誌の投稿規定で許容されています。しかし、著作権が出版元に帰属している以上、研究者による公開には、制約があります。最近では、研究者によるオープンアクセスを許容する雑誌や、一定期間経過後の論文についてはウェブ上にて無料で公開する雑誌も増えていますが、多数派とはいえないように思います。

 出版元の立場からすると、研究者が自由に論文を公開すると、雑誌の売り上げに響きます(確かに、最新号の一覧性という点では、出版元に利点はあるのですが、影響は避けられません。)。
研究者が自由に論文を公開できるのであれば、雑誌の存在意義は、最終的には、一定水準(IFで数値化できます。)の雑誌が掲載に値する論文であると判断したというお墨付きを付与する点に集約されます。雑誌の運営を続けるためには、誰かがコストを負担しなければならないのですから、購入者ではなく、投稿者がコストを負担する、ということにもなりかねません。