フェアユース

 7月22日付けで、「権利制限の一般規定に関する中間まとめ」に対する意見募集(まるめると、フェアユースパブコメ)の結果が公表されています。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000465&Mode=2
 職業的な権利者団体(フェアユース反対!)とそれ以外(非職業的なクリエータ、主に著作物のユーザの立場にいる人など)(フェアユース賛成!)との間で、意見の対立が先鋭化しているように感じます。両陣営とも、互いに煽りあってしまい、労働契約法立法時の労使対立のような状況になってしまわないかと心配になります。

 元来、フェアユースの導入により、権利範囲が広がるというものではないと思うのです。
これまで、「雪月花」や「はたらくじどうしゃ」事件のように、感覚として「結論として権利侵害にするのはおかしいよね」という事案について、裁判所が相当に無理な規範的解釈により、非侵害として救済してきました(「はたらくじどうしゃ」の一部にはやり過ぎ感のあるものもありますが)。しかし、弁護士が、事前の相談を受ける際、これら裁判例のロジックで意見書を書くことは困難です。あのようなロジックは、裁判所だから許されるように思います。そして、少しでも権利侵害のリスクがあるなら、事業の開始に逡巡してしまうという会社も多いのが現状です。

 このような現状の下、無理な解釈で救済するよりは、権利が及ばない領域があることを端的に認めてしまえばよいのではないでしょうか。フェアユース規定の導入は、このような文脈にある限り、中立的です。

 しかし、フェアユース反対陣営は、「フェアユース賛成陣営は、この際、権利の及ぶ範囲を少しでも狭めてしまおうと画策しているのではないか」と疑心暗鬼になり、フェアユース賛成陣営は、「フェアユース反対陣営は、著作権を杓子定規に解釈して何でも侵害にしようと企んでいるのではないか」と猜疑心を深めているように見えます(実際、一部には、そのように画策している勢力もあるのでしょう。)。

 この状況では、フェアユース規定の前途は多難ですね。