「結婚したようなもの」

 沢神奈川県知事の「破天荒力 箱根に命を吹き込んだ『奇妙人』たち」について、知財高裁で、著作権を侵害しないとの逆転判決が出ています。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100716152954.pdf

 問題になったのは、「彼は、富士屋ホテルと結婚したようなものだったのかもしれない」という表現でした。このような言い回しは、よく目にするものであり、創作性があるとはいい難いのではないでしょうか。それにもかかわらず、東京地裁は、この表現が著作権侵害であると判断していました。東京地裁の判断にも、それなりの背景事情と理由があるのですが、結論には無理があるように思います。
 松沢知事の著書と一審原告の著書は、プロットとして非常によく似通っています。しかし、著作権(正確には、支分権である翻案権)侵害となるのは、原著作物の表現上の本質的特徴が感得できるか否かであり(江差追分事件)、プロットが類似しているか否かではありません。
 うがった見方をすると、地裁は、プロットの類似性を考慮し、何とか和解を成立させようと考え、一箇所だけ侵害という心証にして開示したところ(すべての箇所が非侵害という心証では、和解が成立しないでしょう。)、両当事者の折り合いがつかず、あのような一審判決になってしまったのかもしれません。