FRAND宣言の下での差止請求及び損害賠償請求に関する意見募集手続き

 一連のスマホ訴訟(アップルvサムスン)のうち、サムスンがFRAND宣言をした権利を行使した件
http://d.hatena.ne.jp/oneflewover/20130421/1366550722
控訴審において、裁判所の主導により、一般から意見を募集することが決まりました。FRAND宣言のされた特許の権利行使については、世界的にも関心を集めています。原審では、特に不法行為に基づく損害賠償請求について権利濫用の抗弁を認めたことから、控訴審の判断が注目されています。

 意見募集にあたって、第三者は、裁判所に直接に書面を出すことはできず、両当事者の代理人の何れかに送付するという体裁をとっています。代理人が、その書面を書証として裁判所に提出するという方式が採用されています。
 その理由は、民事訴訟法、裁判所が相手方を特定せずに広く意見を求めるための規定が見当たらないということにあるようです。鑑定の場合、民訴213条により、裁判所が鑑定人を指定する必要があります。調査嘱託でも、民訴186条により、裁判所が特定の官庁などに調査を依頼する必要があります。なお、当事者には、文書送付嘱託(226条)及び文書提出命令の申立て(223条)という手段がありますが、これらは、既に存在している文書を収集するための手段です。
 これまでも、各当事者が、著名な教授又は実務家に(自らに有利な)意見書を作成していただき、書証として提出することは、しばしば行われています。今回は、各当事者が意見書を作成していただける方を自ら探すだけではなく、広く一般から募集する点で、従前とはことなります。アメリカのアミカスブリーフを意識しつつ、日本の民訴法上で実行可能な方式が採用されています。

 意見募集にあたって公表された書面を読むと、書面を受領した当事者が、それらのうち自らの主張に合致するものを選別して書証にするということは、想定されていないようです。つまり、募集した書面は、全て書証とされるようです。当事者の意に沿わない書面が出てきた場合、当事者が立証趣旨をどのように記載するのか、さらには、全てを書証とする必要があるのか、という点は、これから解決していくべき問題であるように思います。