アメリカでの2種類のクレーム解釈(特許付与の段階でのクレーム解釈と侵害裁判所でのクレーム解釈)

アメリカでは、伝統的に、特許庁でのクレーム解釈と裁判所でのクレーム解釈とは異なっています。特許庁では、”Reasonably Broadest Interpretation ”(RBI)の基準が採用され、裁判所では、侵害論でも無効論でも、明細書を考慮したクレーム解釈が採用されています(侵害論でも無効論でも、同じ解釈が用いられています。)。特許庁での解釈の基準と、裁判所での解釈の基準とは、異なっています。両者を比較すると、特許庁での解釈の方が、裁判所での解釈よりも広くなります。

 特許庁での無効化の手続き(PGR及びIPR)の拡充にあたり、どちらのクレーム解釈を採用するのかが議論になりました(注:従前の再審査では、審査と同様、RBIの基準が採用されていました。)。
特許庁は、従前の経緯(特許庁でのクレーム解釈は裁判所でのクレーム解釈とは異なるという運用が、裁判所によって繰り返し肯定されてきたこと)に照らし、PGR及びIPRでも、RBIの基準を採用することを決定しました。現在の運用は、RBIの基準に従っています。

ところが、最近、リーヒー上院議員らが上院司法委員会に提出した法案では、特許法を改正し、PGR及びIPRでも、裁判所の基準を採用することが提案されています。

Section 7
(b) USE OF DISTRICT-COURT CLAIM CONSTRUCTION IN POST-GRANT AND INTER PARTES REVIEWS.—
‘‘(A) each claim of a patent shall be construed as such claim would be in a civil action to invalidate a patent under section 282(b), including construing each claim of the patent in accordance with the ordinary and customary meaning of such claim as understood by one of ordinary skill in the art and the prosecution history pertaining to the patent; and
‘‘(B) if a court has previously construed the claim or a claim term in a civil action in which the patent owner was a party, the Office shall consider such claim construction.’’.

この動きに対し、Googleなど情報通信業界の会社が、反対の意見を表明しています。

特許庁と裁判所とでクレーム解釈の基準が一致することは、理想的です。それにより、裁判所が侵害かつ有効と判断したクレームについて、特許庁が無効とすることを防ぐことができます。
もっとも、特許庁は、被疑侵害品に接することができません。さらに、特許庁では、特許権者はクレームを補正することもできます。そして、特許庁での手続を経て補正されたクレームは、当事者以外の第三者に対しても効力が及びます。
したがって、特許庁でのクレーム解釈と裁判所でのクレーム解釈を一致させなくてもよいと思います。