用途発明(2)

 用途発明(http://d.hatena.ne.jp/oneflewover/20100927/1285600164)の続きです。

 化合物の用途発明のように,物の構造から用途が明らかとはいえない場合に,どの段階で出願を可とするのかは,価値判断によります。用途について確証を得なければ出願を認めないという立場もあり得るでしょうし,確証の度合いについても,様々な立場があり得ます。立証手段を出願時に公開することまで求めるのか,出願時に保持していれば足りるのか,いずれの立場もあり得ます。
 このような価値判断をふまえ,どの要件で特許性を判断するのかを決めればよいと考えています。例えば,用途について確証を得ていないから発明が完成していない(29条1項柱書),発明を実施できる程度に明細書の記載がない(36条4項1号),クレームされた発明が当該用途に適用できると理解できる程度に説明されていない(36条6項1号),などの理屈付けができます。どの要件で判断するのかについて安定した運用がなされていれば,それでよいのです。

 もちろん,個別の特許要件を吟味することは重要です。しかし,法律が総体として一つのシステムとして機能することが重要であり,分析に重きを置きすぎて全体を見失うことは避けるべきです。