付与後レビュー制度

 産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会の平成25年2月付け報告書案「強く安定した権利の早期設定及びユーザーの利便性向上に向けて」によると、各種案の中から付与後レビュー制度を導入することが適切とされました。
 この「付与後レビュー制度」の導入は、事実上、付与後異議制度の復活といってもよいものです。もっとも、権利者の訂正請求に対し、申立人にも意見を述べる機会が公式に与えられるという点で、付与後異議とはおとなっています。しかし、維持決定に対して申立人は不服申立ての機会がないという点では、かつてと同様です。

 複数の申立てがあった場合について、上記の案では、「複数の申立てがなされた場合も、審判合議体が全ての申立て理由を整理し、まとめて審理することを原則とすることで、審理の効率化や権利者の負担軽減を図ることができる」とされています。「まとめて審理」が証拠の組み換え(例えば、主引例は申立人Aの主引例を使用し、副引例は申立人Bのものを用いる場合)による取消理由通知まで意図したものか否かは、明確ではありません。しかし、無効資料の抱え込みの防止という点では、そのような運用も許されるように思います。その一方、権利者にとっても、複数の申立てを順に付き合わなくてもよいという点はメリットです。

 付与後レビューと無効審判とのデュアルトラックに関しては、「権利が維持となった場合には、その後に無効審判が請求されたとしても、付与後レビューにおける審判官合議体の判断が、同じ審判合議体による無効審判の審理において、実質的に尊重され得るならば、権利者にとってメリットがある。」とされています。確かに、権利者にとって2回も同じ攻撃をされるのは、合理的ではありません。しかし、申立人にも、付与後レビューで十分な手続保証が与えられるべきです。例えば、権利者が、取消理由通知に対し、クレームを訂正することなく意見のみ述べる場合でも、申立人には、反論の機会が与えられることが望ましいと思います。