プロダクトバイプロセス(PBP)クレームの最高裁判決の調査官解説

 L&Tに、プロダクトバイプロセス(PBP)クレームの最高裁判決について、担当調査官の解説が掲載されています。
 気づいた点は、以下のとおりです。

・製造方法による物の特定に関し、クレームの公示機能及び第三者への信頼が損なわれることへの懸念が重視されている。
 製造方法で物を特定する場合、結局、クレームがどのような物を包含しているのか、不明確になりがちです。上記の懸念は理解できます。しかし、不可能・非実際的事情があったからといって、製造方法で物を特定する場合の上記問題点が解消されるわけではありません。不可能・非実際的事情があれば明確性要件に適合するという解釈は、政策論としては合理的ですが、解釈として無理があります。この点への言及はありません。

・104条の3の導入も重要な要因の一つである。
 104条の3の導入により、技術的範囲の確定と要旨の認定とで解釈・処理の基本的な枠組みが異なることは不合理である(多数意見もこの趣旨を述べています。)、過去のPBPクレームの最高裁判決は104条の3の導入よりも前の事案であり、本判決はこれらの判決と抵触しない、との説明があります。
 PBPクレームに限らず、技術的範囲の確定と要旨の認定が一致すべきであるとすると、侵害訴訟を超えて、特許庁の審査・審判での要旨認定にまで影響が及びます。それで良いのでしょうか。

・訂正でもカテゴリー変更を許容することを提言している。
 脚注ではありますが、PBPについては、カテゴリー変更を許容することは「これを認めるのが相当と思われる」と説明されています。
 この点が最大の問題ですので、手当てを提言していただくことはありがたいのですが、影響を事前によく考えてほしいものです。

 最高裁は、今後、多数の権利者が、製法を相違点として特許を取得しておきながら、構造及び特性の構成要件の充足のみで権利行使を仕掛けるとしたら、そのような事態を放置すべきではないと考えたというのが実態なのかもしれません。