2012-01-01から1年間の記事一覧

引用発明間の技術分野の共通性

主引用発明に副引用発明を組み合わせると本願(本件)発明の構成に到達するという場合の容易想到性の判断では、組み合わせの動機づけが問われます。その考慮要素の一つが、技術分野の共通性です。 技術分野の共通性を考慮するにあたり、引用発明の「技術分野…

審尋は拒絶理由通知の代替となるか−拒絶査定不服審判請求時の補正を却下できない場合

知財高判平成23年10月4日判時2139号77頁は、拒絶査定不服審判請求時のクレーム補正について、独立特許要件を充たしていないとして補正を却下し(その理由は、拒絶査定時と大幅に異なっています。)、拒絶審決がなされた事案において、「特許出願…

インターネットモールの出店者による商標権侵害と運営者の責任

インターネットショッピングモールの出店者が商標権を侵害した場合に、そのショッピングモールの運営者が責任を負うか否かが争われた事案について、控訴審判決が出ています(知財高判平成24年2月14日(平成22年(ネ)第10076号)(原審 東京地判…

専属管轄の合意と併合管轄(国際裁判管轄)

我が国では、これまで、渉外的な民事訴訟での国際裁判管轄についての立法はなされていませんでした。国際裁判管轄について、裁判所の発展させてきたルールは、 ・民事訴訟法の国内の土地管轄に関する規定に列挙されている裁判籍のいずれかが我が国内にある場…

多機能型間接侵害の規定導入後の「のみ」要件

特許法101条(間接侵害の規定)は、元々、現在の1号(物の発明)と4号(方法の発明)のみで構成されていました。これらの条項では、生産等の対象が、いわゆる専用品であることが要求されています(例えば、方法の発明について、「業として、その発明の…

著作権の保護期間と過失

格安DVDの著作権侵害の事案で、知財高裁が過失を否定して損害賠償請求を棄却した件(知財高裁平成22年6月17日)につき、最高裁が破棄差戻しの判決を下しています(最判平成24年1月17日)。[著作権の保護期間] 格安DVDの事案での争点は、著…

パブリシティ権の性質

ピンクレディ事件の最高裁判決が出ています(最判平成24年2月2日)。 パブリシティ権の性質については、人格権的構成と財産権的構成とがあり、どちらに依拠するかによって、権利の譲渡や相続について違いが生じます(これまでの下級審判決の詳細な解説と…

著作権侵害と一般不法行為

北朝鮮映画事件の最高裁判決(最判平成23年12月8日)が出ています。 控訴審(知財高判平成20年12月24日)は、北朝鮮の国民が著作者である映画(当然のことながら、映画の著作物に該当します。)について、著作権法6条による保護を受けられないと…

プロバイダ責任制限法上の「特定電気通信」と1対1の通信、著作権法上の「公衆」

プロバイダ責任制限法の適用対象を画する上で、「特定電気通信」は重要な概念です。プロバイダの損害賠償責任が制限されるのも、発信者情報開示請求権が生じるのも、「特定電気通信」との関係です。 「特定電気通信」は、「不特定の者によって受信されること…

プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(2)

知財高裁大合議が、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの技術的範囲の解釈と、104条の3の抗弁における要旨認定に関する判決を出しました。 原審についてはこちら http://d.hatena.ne.jp/oneflewover/20110505/1304608700 未だ要旨しか公開されていま…

クラウドと著作権

まねきTV事件及びロクラクII事件の最高裁判決(最判平成23年1月18日民集65巻1号121頁及び最判平成23年1月20日民集65巻1号399頁)以降、クラウド(コンピューティング)のサービス事業者が著作権侵害を問われるのではないかという…

技術分野と技術的課題

進歩性の判断構造のうち、相違点の判断のステップでは、考慮要素の一つとして、主引用発明と副引用発明との間の技術分野の共通性が挙げられます。 もっとも、技術分野を上位概念化していくと、何かしらの「共通性」を見出すことが可能です。そして、考慮要素…

公然実施された発明の具体性

新規性又は進歩性欠如の無効理由において、多くの場合、主引用発明として刊行物公知発明(特許法29条1項3号)を用いますが、公知(同法29条1項1号)又は公然実施(同法29条1項2号)発明を用いることもあります(公知と公然実施(公用)とを厳密…